【葛飾を知る】柴又・山本亭

山本亭とは?

映画「男はつらいよ」シリーズの寅さんで有名な東京都葛飾区の柴又。柴又駅から帝釈天へ続く参道は観光地として有名ですが、さらに江戸川方面へ進んだ先、「寅さん記念館」と「山田洋二ミュージアム」のすぐ隣にあるのが「山本亭」です。

山本亭は今から約 1 世紀前、大正時代の末期に建てられた邸宅。柴又を拠点に実業家として活躍した山本家の邸宅として四代にわたって利用されましたが、老朽化を機に 1988 年(昭和 63 年)に葛飾区が取得し、耐震工事などを経て、現在は一般公開されています。大正末期から昭和初期にかけての時代の雰囲気を反映した和洋折衷の建物に、純和風の庭園が隣接している点が特徴的です。

名称
山本亭
概 要
大正末期から昭和初期にかけての近代和風建築。和風住居に洋風の接客部分を併設した近代和風建築と、純和風の書院庭園からなる。
建設年
大正末期から昭和初期
規 模
木造瓦葺き二階建て(1階 400㎡、2階 50㎡)、長屋門、庭園(890 ㎡) 、茶室
所在地
東京都葛飾区柴又 7 丁目 19 番 32 号
最寄駅
京成金町線柴又駅・北総線新柴又駅
開館時間
午前中 9 時から午後 5 時まで
休館日
第 3 火曜日(第 3 火曜日が祝日・休日の場合は、直後の平日)及び 12 月の第 3 火・水・木曜
入館料
100 円(寅さん記念館とのセット券を購入すれば合計金額が 50 円引き)

近代和風建築の雰囲気を残す邸宅

庭園に面する開放的な居室空間

建物内部の大部分を占めるのが全 6 室の居宅空間です。各部屋は、花・月・星・風・雪・鳥とそれぞれ名付けられています。部屋の作りとしては、竿縁天井、欄間、襖、障子、畳など、典型的な和風の床の間です。一方で、モダンな照明や、部屋に隣接する長廊下に敷かれた赤い絨毯から、和洋折衷な雰囲気を感じます。

部屋はすべて廊下を挟んで庭園に面しているのですが、部屋の間に壁がなく、また廊下と庭園を区切る戸が透明なガラス窓であることから、部屋の内部にいながら庭園全体を見渡すことができます。廊下に面する戸の欄間はガラス製で、自然光が差し込む作りになっているため開放的です。その反面、真夏や極寒時に快適に過ごす上で、当時どのように対応していたのかが気になるところです。

洋風の応接間

伝統的な和風建築をベースとする山本亭ですが、旧玄関の脇に一部屋だけ洋室があります。鳳凰の間と呼ばれるこの応接間の内部には、洋風の照明や暖炉、ソファー、テーブルセットなどが設置されており、邸宅内の他の場所とは雰囲気を異にしています。

伝統的な長屋門

隣接する「寅さん記念館」側には、伝統的な造りの長屋門が建っています。長屋門とは武家屋敷の表門として広く利用された伝統的な門形式で、門の両側に置かれた部屋は、門番や家臣、使用人の居所として利用されていたとのこと。山本亭の長屋門にも両側に小さな部屋が設けられており、門番や客人のおつきの人、人力車の車夫などが控えていたとされています。ちなみに、母屋の内部には人力車が展示されていました。

純和風の書院庭園

書院庭園

山本亭の庭園は、手前に池を、奥には植え込みと築山、滝を配置することで、視覚と聴覚の両方を通じて見る人に立体感や奥行きを感じさせる構造になっています。山本亭の庭園のように、書院からの眺めを第一に考えて設計された庭園を「書院庭園」と呼ぶそうです。廊下の外側には大きな濡れ縁が設けられており、庭園の風景や光、空気、水の音をより近くから感じることができます。

山本亭には喫茶メニューが用意されており、抹茶やコーヒーなどのドリンクや、和菓子やぜんざいなどの甘味を邸内で楽しむことができます。また、主庭に面した花・月・星の 3 部屋を貸室として開放しているため、予約の上で利用料を支払えば、お茶会などに利用できます。天気の良い日に庭園を望みながら、お茶を飲みつつゆっくり過ごせば豊かな気分になれそうです。

防空壕跡が残る通路

「寅さん記念館」側から長屋門をくぐると、山本亭の母屋を取り囲む形で長い通路が続き、帝釈天側の正面玄関に出ることができます。この通路沿いにも手入れされた植木や芝生が広がります。途中、小さな池があり、水草の下を鯉が元気に泳いでいます。通路沿いには防空壕跡が保存されていました。通常は非公開ですが、時期によっては内部を見学できるイベントが開催されているようです。

レンタル可能な茶室

通路を挟んで母屋の反対側には茶室があり、予約の上で料金を支払えば利用できます。茶道具の無料貸出も行っているとのことです。

山本亭の歴史

葛飾区柴又 7 丁目にある山本亭ですが、その敷地はもともと、江戸時代からの庄屋である鈴木家の土地でした。鈴木家はその地で瓦工場を営んでいましたが、1923 年(大正 12 年)の関東大震災を機に工場を閉め、山本家がその跡地を購入しました。山本亭に今もなお現存する土蔵は、鈴木家から唯一引き継いだものだそうです。

山本榮之助氏は 1868 年(明治初年)に日本で初めてパワープレスを輸入し、プレス・金型部門の近代化と大量生産化に取り組んだ人物です。1914 年(大正 3 年)には「合資会社山本工場」を創立し、各種の金属加工技術を開発するとともに、カメラの部品メーカーとしても成功を収めます。山本家の自宅と工場はもともと浅草の小島町にありましたが、先述のように 1923 年(大正 12 年)の関東大震災を機に柴又へ移転し、山本亭を邸宅として建設しました。その後、大正末期から昭和初期にかけて増改築が行われ、山本亭は現在の姿になります。

山本亭はその後、山本家の邸宅として四代にわたって利用されました。山本工場の二代目社長山本榮蔵氏は金属加工技術で数々の特許を取得し、紫綬褒章を受章した人物です。三代目社長の山本榮蔵氏は自動化設備の改善に尽力し、四代目社長の山本榮之進氏は「株式会社山本工場」の代表とのこと。山本工場は現在、千葉県鎌ケ谷市に工場を置き、金属塑性加工(金型・冷間鍛造・プレス、溶接)の分野で活動しています。

大正時代から長年にわたり邸宅として利用されてきた山本亭ですが、老朽化を機に、貴重な建物を解体してしまうのではなく、公共施設として生かす可能性を模索する中、1988 年(昭和 63 年)に葛飾区が取得し、1991 年(平成 3 年)から一般公開されるようになりました。

海外の評価

アメリカで発行されている日本庭園・日本建築専門誌「The Journal of Japanese Gardening」が 2003 年から毎年発表している日本庭園全国ランキング「Shiosai Rankings」において、山本亭は上位にランクインし続けています(2018年12月発表の最新ランキングでは 4 位)。

このランキングは、日本の庭園を規模や知名度によらず、「庭と家が一体となった日本的な生活環境」をテーマに、純粋にその美と質によって評価することを目的としたものです。全国の旅館や旧別荘など約 1,000 箇所を対象に、世界各国の専門家が選出を行っています。山本亭の評価ポイントを以下に引用します。

好感度No.1。駅から柴又帝釈天の参道を通って山本亭に着くまでにもういい気分になれる街。おじいちゃんの家のきれいな庭の見える座敷でのんびり過ごすのと同じ体験が出来る和み空間。百円で一日中いても怒られない貴重な数寄屋建築。お座敷で喫茶軽食も。柴又の気さくで優しい人々とのふれあいも楽しい。

このコメントが示唆するように、山本亭の魅力は「柴又」という文脈の中でより深く理解できそうです。

重要文化的景観「柴又」の風景として

柴又は 2018 年 2 月に都市部で初めて「重要文化的景観」に認定されました。「重要文化景観」とは、平たく言うと「風景の国宝」に相当する文化財です。

日本のまちづくりにおいては、戦後の急速な都市化の中で経済性や効率性、機能性が重視され、景観の美しさには十分な配慮がなされませんでした。その結果、人々の生活や風土に深く結びついた個性豊かな地域特有の景観が失われてしまいました。急速な都市化の時期が終わりを迎え、美しい街並みなど、景観に関する人々の関心が高まる中、個性ある美しい街並みや景観を保全・形成することを目的に、2004 年に景観法が成立しました。「重要文化的景観」は、翌年に施行された改正文化財保護法のもとで始まった制度です。

「文化的景観」とは、各地の風土に根ざして営まれてきた人々の生活や生業のあり方を表す景観地のことであり、その中でも特に重要なものが「重要文化的景観」として国に選定されます。

「重要文化的景観」の選定は 2004 年に始まり、2019 年 10 月の時点で 65 件が選ばれていますが、その多くが農村や山間部の事例である中、柴又は数少ない都市部の事例の一つです。

柴又が選ばれた理由としては、近世初期に作られた帝釈天と近代以降に発展した参道、さらにそれらの景観が形成される背景となった人々の生活、歴史、風土などを伝える景観が残存していることなどが挙げられています。山本亭は、帝釈天と門前(「第 1 のリング」と呼ばれる空間)を支えたかつての農村部空間、江戸川河川敷沿いのエリア(「第 2 のリング」と呼ばれる空間)に含まれており、重要文化的景観の一部として位置づけられています。

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